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経口補水療法

近年、小児の嘔吐下痢症に伴う脱水症に対して、発展途上国で標準的治療法とされている「経口補水療法」が注目を集め始めました。経口補水療法とは、嘔吐や下痢が始まったら、脱水の予防と治療のために、適度な電解質を含み腸から血液に水分が吸収されやすいように糖分の濃度や浸透圧を調節した『経口補水液』を飲ませる方法です。点滴療法に比べて、痛くなく、心臓や腎臓への急激な負担が少なく、器具や技術が要らず、家庭でできるという利点があります。経口補水液は、市販のスポーツ飲料の事ではありません。市販のスポーツ飲料に比べて、ナトリウム量が約2倍、糖分が約半分で、より身体に優しく調節された飲み物です。塩分が高く糖分が低い・・・美味しくなさそうですよね。その点を企業努力で克服しようとした飲料も、市販されています。薬局で御問い合わせください。

[経口補水療法の実際(飲ませ方)]
1. 症状出現後3~4時間以内に、総量50~100ml/kg飲ませる。
2. 症状出現4時間以降は、下記の量の経口補水液を飲ませる。
A:10kg未満児 → 嘔吐や下痢の度に、毎回60~120ml
B:10~20kgの児 → 嘔吐や下痢の度に、毎回120~240ml

[飲ませ方のポイント]
嘔気が落ち着いたら、まず5mlをスプーンやスポイトで与える。
5mlが可能なら、10ml、20mlと5~15分間隔で倍量に増量。
5mlでも吐くようなら、15~30分後に再チャレンジ。
2回目もダメなら30分後に再チャレンジ。

[経口補水療法時の食事療法(変化した方針)]
十数年前、嘔吐と下痢の激しい時は3~4日絶食で点滴をして、胃腸を休めた方が良いと学んで実践してきました。ここ数年、3~4日でも絶食する事によって、小腸の粘膜が萎縮して回復が遅れるという意見が強くなり、欧米では「固形食を含む、早期の食事再開が望ましい」と言われ始めました。母乳には腸粘膜の修復作用があるために制限はありませんが、ミルクも薄める必要は無いとも言われています。驚きの新しい研究結果です。私はこの研究に出会ってから、「食べられるようなら、生もの、油もの、刺激物、冷たいものを避けて、消化のいいものを食べさせてもいいですよ。」と、言うようになりました。無理をする必要も、マニュアルに固執する必要もありません。『経口補水液』と難しく言っていますが、昔ながらの「味噌汁の上澄み」は、成分的には立派にしょっぱくて甘くない『経口補水液』になっています。それほど量は飲めませんけど・・・(笑)。新しい情報は、振り回されないように上手に取り込む必要があると思います。

(平成20年3月20日)