診察室から

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給食のおもいで

36年振りの小学校の同窓会で欠かせなかった話題は、給食時間の話でした。嫌いなオカズに四苦八苦しながら楽しく話しながら食べた給食の時間は、いい思い出になっていました。
この「診察室から」のページに、以前から書きたかったのに、教育関係者の方々からの反応が怖くて書けなかった事、言いたかった事を、見事な綺麗な文章で、5月17日の愛媛新聞の「地軸」に書かれていたので御紹介します。

『仲のいい友達同士が机を寄せ合って、わいわい言いながらの昼ご飯はたのしかった▲今は少し様子が違うようだ。県内のある小学校では、自分の席で前を向いて黙々と食べるように指導されていると聞いた。私語をすると先生に注意される。衛生面での配慮と短い時間内に完食させるためらしい。静まりかえった教室にそしゃくと食器の音だけが響く。想像するだけで寒々とする▲保育所にはもっと極端な話がある。ハンドタオルで作った前掛けを首にかけたままテーブルに敷き、その上に食事が入った食器が並べられる。体を移動させると食器がひっくり返るため、子供たちはほとんど身動きが出来ないまま、スプーンで給食を食べる▲フリージャーナリストの小林美希さんが、著書「ルポ保育崩壊」(岩波新書)の中で報告している。おかずをこぼしても片付けやすいように、そして子どもたちが食事中に歩き回るのを防ぐための「保育の工夫」だそうだ▲背景にあるのは深刻な保育士不足。恒常的に人手が足りず、子どもたち一人一人に手間をかけられない。「効率」という大人の側の都合が最優先されている▲給食は、正しい食習慣を身に付け、食材提供者への感謝の気持ちを育てる「食育」の場でもある。「今日の給食おいしいね」と感想も言い合えない雰囲気では、食に対する豊かな感性が育つとは思えない。』

たかが給食、されど給食。短い給食の時間にも、現代の保育を含む教育の問題が凝縮されているように思います。

(平成27年6月16日)