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子供の発熱と解熱剤

[体に不可欠な防御反応~状態をよく見て使用を]

新米医師の主治医としての仕事は、ベテラン医師の監視と指導を受けながら診療をする一方で、ベテラン医師の仕事ぶりを見て学ぶことから始まります。

私が上司の診療を見ていたときの話です。

患者さんのお母さんから「高熱が続くと脳に影響が出ませんか?と質問された私の上司は、「熱は42度以上にならないと頭に影響はありません」と答えていました。同じやりとりを何度も見るので、ある時私は「なぜ42度なのですか?」と質問してみました。上司は「42度以上の熱は出ないだろ?」と笑って答えました。
確かにわれわれの体の体温上昇には上限があって、自分自身を壊すことが無いようにできています。よほどの状態でない限り、42度以上の発熱はあり得ないのです。ぶっきらぼうで言葉数の少ない上司の返答の裏には、「熱の高さなんて心配しなくていいのだよ」という優しい言葉(気持ち)が隠されていたのです。

「発熱」は主にウイルスや細菌の感染によって起こります。わざわざ熱を高くすることによって免疫力は強くなり、ウイルスや細菌と闘う力が高められます。高熱が続いて亡くなったり、ひきつけたり、知能障害が残ったりすることがまれにありますが、それは亡くなったり後遺症となったりする病気だったということで、高熱が悪者ではないのです。本来の病気が治る経過や免疫機能の働きを考えると、高熱は体に必要な防衛反応の一つだと言うことができます。

では、解熱剤(解熱・鎮痛薬)は使うべきではないのでしょうか?
高熱が続くと、グッタリとして水分の補給ができなくなったり、つらくて不機嫌な状態が続いたりすることもあります。高熱でも寝るときは寝る、飲むときは飲むという「メリハリのある状態でのグッタリ」は、体を動かすためのエネルギー消費を抑えて体の中の病気との闘いに集中しているとも考えられます。高熱のために「水分も取れず脱水の危険も気になる状態」や「子どもがつらがって不機嫌が続く状態」などは、解熱剤を使ってもいいと思います。解熱剤の使用によってたとえ熱が下がらなくても、水分が取れるようになったり寝られるようになったりしたなら、使用した価値は十分だと思います。

解熱剤も薬なのでまれに副作用もあります。副作用の無い「解熱・鎮痛薬」として、冷えたタオルで頭や首筋、脇や脚の付け根を冷やしてあげるのも良い手です。熱を下げることばかりに気を取られないよう、子どもを見てあげることができるといいですね。
<平成28年9月13日 愛媛新聞「健康ファイル」に掲載>

(平成28年9月17日)