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本当の優しさ

日本は豊かになり、情報があふれ、物があふれ、本当の優しさを伝えにくくなっています。あまり人と直接かかわらなくても生きていける便利な時代でもあります。日頃診療をしていて、核家族化のため育児に「お婆ちゃんの知恵袋」を使えず、情報と物に溺れておられる親御さんが多くなったように感じます。子供が育つのをじっくり待つことが苦手で、情報と物を使ってあれこれ子供の育ちに手を出しすぎる傾向があるように思います。抱っこされたい時に抱っこしてもらえず、1人で歩きたい時に羽交い絞めにされているような子育ての現場を見ることさえあります。

子供達は抱っこが大好きです。抱っこや人とのふれあいを通じて、子供達は自立していきます。「求めると抱いてもらえる」事を繰り返すことによって、親に対して「信頼感」を学び、抱いてもらえる自分を価値のある存在だと「自己肯定」することが出来ます。子供が自立していくために必要な、安心感に満ちた「土台」が創られるのです。

2~3歳までにしっかり抱かれて「土台」を創り、友達と遊び始めて自立が始まります。傷つき不安になった時の帰り場所を意識しながら成長します。親は、帰る場所を整えて成長を待っていればいいのです。

そのはずですが・・・。度々「抱っこ~」と帰ってくる我が息子を見ていて、「基礎工事失敗か?」「成長はしているのか?」と思ってしまうのが現実なのです(悲)。

(平成19年9月19日)