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「スポーク外傷」は慎重に対応してください

小さい子供を自転車の後部座席に乗せて自転車をこいでいた時、誤って後部座席の児の足が後輪に巻き込まれて傷ついた状態を「スポーク外傷」と言います(車輪の「スポーク」に巻き込まれるからです)。多くの場合がアキレス腱の周囲に傷が出来ます。

足首の周囲は触って判るように、もともと皮膚や皮下組織が薄く血流があまり豊富ではありません。そこに巻き込みなどで強い圧力がかかると組織は簡単に死んでしまいます。こうした強い圧力により生じる傷を「圧挫傷(あつざしょう)」といいます。骨折もしてないようだし、ただの皮膚表面の「すり傷:擦過傷(さっかしょう)」だと軽く見て初期の対応が悪ければ、皮膚に血液が戻ってこず、皮膚が黒く変色して壊死してしまうのです。「整形外科医泣かせ」として有名な子供の外傷の一つです。

骨折をしていないかどうかの確認はもちろん必要です。傷ついたり、スポークによって擦(こす)られてはがされた皮膚は、細菌感染に対して慎重に経過を観なければなりません。加えて、殺菌・消毒して傷をガーゼ固定するという普通の擦過傷の治療をすると治り難い事が多いようです。スポーク外傷は軟部組織の損傷なので基本的に「消毒をしない」「水道水でよく洗う」「乾かさない」を3原則として行う「湿潤療法」という方法が勧められています。 比較的多く有名な外傷なのに、実はその危険性はあまり知られていない為に注意が必要です。自転車の後部座席を利用する際には気を付けて下さい。

 

令和2年10月6日追記

「湿潤療法」でないとよくないという誤解と御心配をおかけしてしまったようです。申し訳ありませんでした。この記事を書いたのは、他科さんで骨折の確認も無く殺菌消毒して抗生剤軟膏処方のみで治療終了とされていた児が、3~4日後に「歩けない・足が痛い」と当院を来院して、受傷した下肢半分から下・足全体にパンパンに腫れて細菌感染として7日間の入院が必要となった児を経験したからでした。一見して入院抗生剤点滴が必要と思われる状態でした。その為、『スポークに巻き込まれてできた足首の傷は、「ただの擦り傷」のように見える傷でも慎重に対応(様子を見る)する必要がある』という事を強くお伝えしたくて書いたコラムでした。近年「湿潤療法」が勧められていますが、傷の状態によっては従来の処置が行われる場合もあります。追記をさせていただき、改めてお詫び申し上げます。

壬生 真人 拝