小児の新型コロナウイルス感染症が増えてきていますが、その症状は成人・高齢者に比べて極めて軽いか無症状の場合が多い様に思います。
ワクチンの効果はかなり高いと思われますが、接種部位の疼痛・発熱・頭痛・倦怠感などの副反応は、この年齢に接種されている他のワクチンとは比較にならない高確率です。副反応に関するデーターは、少ない上に将来的な副反応のデーターも存在しません。
感染すると重症化のリスクがある児の接種が認められるようになった事は喜ばしい事ですし、感染抑制のデーターは少ないのですが、新型コロナ感染症がもたらす「長い行動制限」が子供達の「日常生活や健全な生活環境」を奪っているという現実、将来的な「子供達の心身への影響」は出来る限り少なくする必要があると思います。
接種時に一定数起こる「アナフィラキシー」や「血管迷走神経反射(①)」、接種との関与も言われている慢性的に不調症状が続く「機能性身体症状(②)」についても十分な注意と対応が必要だと思います。精神的要因の関与が重要視される①②の事を考えると、強い不安感や恐怖心を抑えてまでの接種には躊躇してしまいます。同調圧力のために嫌々接種する事にも問題があると思います。
私は、新型コロナワクチンの接種は、その機会を奪われる事があってはいけないと思います。「打つべき」というより「打った方が良い」と思います。一方で、「将来的な副反応のデーターが無いから今は打たない」という考え方も認められるべきだと思います。子供達に強い不安や恐怖心がある場合にも、接種をしないという選択肢があっても良いと思います。親御さんが「打った方がよい」と思われても、子供達の不安が強かったり強く嫌がるなら「打たない」方針転換も必要だと考えます。
新型コロナワクチンの接種に限っては、「嫌なものは嫌!」「嫌だけど頑張れる!」とハッキリ意思表示できる子供達のその意思は尊重したいと思います。重症化リスクの高い子供達は別として、高い確率の副反応にも耐えられる子供達の意思と、それを見守る親御さんの意見が尊重されても良いと考えています。
- ①:当院HP「子育てQ&A」の「迷走神経反射って何ですか?」参照
- ②:当院HP「子育てQ&A」の「機能性身体症状って何ですか?」参照
追記
「だからぁ(イロイロ聴くけど困っとるんよぉ~)打ったら良いの?打たない方が良いの?」とよく聞かれます。判断に困っておられる親御さんが多い様なので、参考意見として、無責任に誤解を恐れず「2人の子供を持つ親として」述べるとします。
私の子供達がまだ5~11歳なら、医療従事者の子供として打たせようとします。特に、自分の意見をしっかり持ち始める小学校高学年ならなおさらです。私が医療に従事していないなら、懐疑心(かいぎしん)が強めの私は、「少なくとも数年先のデータすら無い状況」では打たせません。様子をみます。しかし、子供達が「友達も頑張るから私も頑張る」と意見するなら、根拠の浅い意見だとしても打たせると思います。同調圧力で嫌々ではなく、子供の拙いながらも「意見・判断」なら協力します。子供達の不安が強かったり嫌がるなら打たせません。同調圧力に一緒に対抗しようと出来る限りの努力をすると思います。
医者としてではなく、一人の親として、無責任な気持ちを書かせていただきました。
少しでも親御さんに寄り添う事が出来ればと言う、医療に少し詳しい友人の親としての「ぶっちゃけ」ですので、「責任の追及」は御遠慮させていただきます。
~~~~~~R4.9.18改正(令和4年「みぶ小児科だより」10月号掲載)~~~~~~~~
[Q]:5歳~11歳の新型コロナワクチンの予防接種はするべきですか?(再質問)
[A]:4月1日号で同じ質問に答えさせていただきました。子供の感染者が少なく、症状が軽い一方で、予防接種の副反応が高確率で、データが少ないという理由で接種に慎重な回答をしていました。9月現在、オミクロン株の流行に伴って小児の感染者数も増加し、重症例や死亡例の割合は低いものの、重症者数は増加したことが報告されています。接種についてのデータも、1・2回目のワクチン接種を経験して、オミクロン株流行下での一定の科学的知見が得られました(1・2回目のワクチン接種の発症予防効果は中等度の有効性、入院予防効果は接種後2か月間で約80%に有効との報告がありました。また、米国の大規模データの解析で安全性に関する懸念はないと報告され、日本での副反応疑い報告の状況からも、ワクチンの接種体制に影響を与えるほどの重大な懸念はないと発表されました)。その後も専門家による議論が重ねられ、私と同様に少し慎重だった小児科医会も、厚生労働省としても、令和4年9月6日、小児(5~11歳)に対する初回(1回目・2回目)接種、3回目接種ともに、「努力義務」が適用されることになりました。
新型コロナワクチンの予防接種は、「勧められる」だけではなく、「した方が良い」「できるだけ努めて接種して欲しい」という事になりましたが、接種が強制でない事や、本人や保護者の判断に基づき受けていただくことに変わりはありません。