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おたふく風邪の診断における問題点

今治市のある地域で「おたふく風邪」が流行っています。多くの方が、「片方の耳の下を痛がって少し腫れてきました。オタフクでしょうか?。」と言って来られます。「おたふく風邪」の感染初期には、はっきりと診断できずに様子を観ることになって、なんとも歯切れの悪い、申し訳ない思いをする事がよくあります。両方の耳下腺の腫れが明らかで、流行中であれば比較的診断は容易なのですが、「おたふく風邪だ!」と言い切り難い問題点を[おたふく風邪の診断における問題点]として列記してみます。はい。チョットだけ言い訳です(笑)。

耳下腺が腫脹する疾患は「おたふく風邪」だけではない。
(特に、片方しか腫れない場合は、他の疾患の可能性も高い)
多くの「おたふく風邪」は両側の耳下腺が腫れるが、腫れる時期が左右でずれる場合が多い。
(結局、片方しか腫れない場合もある)
不顕性感染が30~40%ある。
腫脹が軽い場合、他の唾液腺腫脹の場合とまぎらわしい。
発症初期では、血液検査でも分からない。
(正確に診断するためには、急性期と回復期の2回の採血検査で抗体価の上昇を確認する必要がある)
ウイルスに特異的で迅速な検査方法がない。
医療現場で使える迅速検査キットが開発されていない。
予防接種をしていてもかかる事がある。
一生に何度もかかる事がある。

「おたふく風邪」は早期の診断が難しい上に、インフルエンザの様なウイルスに特異的な治療法(:特効薬)も無く、髄膜炎、膵炎、難聴などの合併症の頻度も高い疾患なのです。

(平成22年9月16日)